トリリンガル 北京 生活

狂気

 狂気とは人の正常とされる状態を著しく超えているからこそ狂気と呼ばれるのであって、その状態を積み重ねることによって生じたものが大きな力を持つのは至極当然なことであり、またその力が自分の人生において多大な意義を持ち、自分が生きるための糧となるのもまた容易に理解できるものである。
 もちろん狂気は常に暴走を伴う。そしてその暴走が己のすべてを崩壊に導く可能性を秘めているのも確かである。この崩壊に対する恐怖こそが我々を狂気から遠ざけているのだ。しかしながらその崩壊を恐れて狂気を封じ込んでしまってはいけない。一方的に封じ遠ざかるのではなく、その崩壊し得る己を見据え克服することによりそれを己の一部として受け入れ、狂気を追及し続けるのだ。それは正しく火を恐れた人類がそれに向き合い克服することによって文明を築いてきたのと同じ行為である。己の崩壊に対する恐怖に向き合いながら、狂気の沙汰を追及することにこそ我々人類の進歩に最も重大な意味を持っていたのである。恥じることはない。己の道を貫いたものこそ真の勝者となりえるのだ。

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